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こんな場所に賃貸物件を建てたら失敗確実? ポスティングスタッフが貴重な証言

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イメージ/©︎kimtoru・123RF

ポスティングスタッフは見ていた!

一定の範囲のエリア——例えば、ある駅から徒歩20分くらいまでの賃貸物件ならば、数がどれだけあろうと、そのほぼ全てに出向いたことがある……。

しかも何年もかけてではない。たったのここ数カ月の間に……!

つまり、その人はそれらの物件にいまどのくらいの空室があるのかをほぼ見てきている人、ということになるのだが、そんな人が存在するのだろうか?

……いるのだ。それは、広告会社のポスティングスタッフだ。彼らは、1エリア当たり1000~2000程度の数におよぶ郵便受け=ポストを2~3日かけて回り切る(一例として)。

担当エリアが10あれば、ポストの数は軽く1万を超えることになる。一戸建て、分譲マンション、オフィスビル、商業ビル、さらにアパートや賃貸マンションも、当然その中に含まれる。(ただし、ごく僅かながらさまざまな理由で対象外となるポストも存在する)

賃貸物件の空室は、ポストを見るとその存在を概ね知ることができる。投函を避けるためのテープやシールが、管理会社などの手によって通常は貼られているからだ。あるいは、古い郵便物やチラシがいつ訪れても詰まったままだったりする。

そこで、そんなポスティングスタッフの仕事を運動不足の解消がてらこの春から始めたというAさん(熟年男性・首都圏にお住まい)に、今回いくつかの質問をぶつけてみた。

返ってきたその答えは、賃貸住宅オーナーや、これから賃貸経営を始めたいと思っている人にとって大変役立つものだ。ぜひ参考にしてほしい。

まだピカピカな築浅物件でも苦戦! 最も空室が目立つ物件とは?

最初はこの質問だ。

——最も空室の目立つ物件とはどんな物件ですか? 

つまり、「こんな物件を建てたり買ったりしたら、高確率で賃貸経営に失敗する」ともいえるものなのだが、Aさんによると、見事なくらいに共通するパターンがあるという。それは——?

「道路です。目の前の道路が非常にうるさい物件です。建物に接する車道を車がひっきりなしに行き交い、朝から晩まで――場合によっては24時間、タイヤやエンジンの音が鳴り響いているような場所に建つ物件です。20室くらいのアパートで、埋まっている部屋が6つくらいしかない……とか、築後間もないきれいな賃貸マンションなのに、3分の1以上が空室……といった異様な物件を見て私も驚くことがあるのですが、多くがこのパターンです。しかも、こういった立地で建物が古いとさらに大変です。無人の廃墟か、それに近い状態になっていることもあったりします」 

では、鉄道はどうなのだろう? 線路沿いも朝から夜までうるさいロケーションであることに変わりはないが……?

「面白いことに、うるさい道路沿いに比べて線路沿いでははっきりした傾向が感じられません。もちろん、入居者募集に不利なことは間違いないでしょう。ですが、それよりも建物の古さなど、ほかの条件による影響の方が強い印象です。電車の走る音や踏切の警報音は、車の音と違って音色や音量が一定です。また、運行時間外は必ず止むので、慣れて気にならなくなる方も多いのかもしれません」

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一秒でも早くその場から立ち去りたい“不潔”物件

次に、Aさんにこう尋ねてみた。

——ロケーション以外で、ここには住みたくないなと感じる物件にはどんなものが多いでしょう?

「まず、私の仕事に絡めていえば、集合ポストの個々のサイズが小さな物件や、集合ポストが無く、ドアポストが郵便受けになっている物件は、私自身住むのは嫌です。A4サイズの郵便物がすべて半分に折られたり、差し入れ口から飛び出して盗まれやすくなったり、ネット通販のメール便などが受け取れなかったりと、かなりのストレスになるからです」

ほかには——?

「不潔な汚い物件は本当にうんざりです。ホコリが溜まった階段……カビやコケが真っ黒にこびりついた共用部分……転がるゴミや虫の死骸……天井を這うクモの巣……一秒でも早くその場から立ち去りたくなります。当然ですが、そうしたアパートやマンションでは空室もかなり目立ちます。それとたまに出くわすのが、古い物件に多いのですが、そこの主(ぬし)みたいな人が住んでいると見られる物件です。自分の部屋の前の廊下などに勝手に私物やゴミを積み上げ、個人の庭か物置きにしています。仲良くなれば楽しい人もなかにはいるのでしょうが、基本ややこしそうですよね。同じ屋根の下に住むのはぜひとも遠慮したいです」

家賃が少々高くても「ここに住みたい」と思われそうな物件とは?

次に、「ご自身も賃貸を探すとすれば住みたくなるような物件」 をAさんに尋ねてみた。 

「あくまでポスティングスタッフをしている私から見える範囲、つまり、居室内部やオートロックの内側などを除いた部分での話になりますが、私が賃貸を探すとするならばきっとここを選ぶだろうと思う物件は、『入居者の財産や生活を大事にしてくれている』と、感じられる造りの物件です。キーワードは『屋内』です。どういうことかというと、さきほどの集合ポストもそうですが、宅配ボックスも、駐輪場も、オートロックの操作盤も、そういった物件では外ではなく、建物の入り口を一歩入った内側、つまり屋内にあるのです。自転車や郵便物、共用設備が、雨や風、太陽、ホコリに晒されず、汚れたり、傷んだりしにくい場所です。もちろん、そうした物件のなかには入居者目線を特に意識したわけでなく、単に敷地や予算に余裕があって生まれたものも多いのでしょう。ですが、内見に来られた入居希望者のほとんどは好感をもつはずです。『家賃はちょっと高いけれどここに住みたい』と、感じる場合が増えるものと思います」

単身向けの物件でよく出会うのは、若者ではなく人生の先輩たち

そのほか、仕事をしていて気付いたことをAさんに尋ねてみた。

「やはり時代だな、と思うのは、ワンルームばかりがずらりと並んでいるようなアパートや賃貸マンション——平成の初め頃は若者ばかりが集まっていたような物件で、たまたま住人に出会うと、その半数以上が私よりもずっとご年配の方であることです。元気なおばあちゃまから『ご苦労さま』などとお声がけされることもありますが、一方で、耳がかなり遠く、挨拶してもすぐには気付いてくれない、足元もおぼつかない高齢の男性が、2階の部屋から急な階段を一歩ずつ降りていくのを目にしたりもします。皆さん、当然一人暮らしと思われますが、見守りをどなたがされているのだろうと、つい気になってしまいます」 

——以上、いかがだろう。

広告会社のポスティングスタッフAさんからいただいた、賃貸経営のヒントにもなる貴重な証言をいくつか紹介してみた。「目の前の道路がうるさい物件」を筆頭に、どれも、ぜひ心しておきたいアドバイスだ。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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